コインロッカー

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ボス犬女の尻を転がっていた椅子をハンマー代わりに叩きのめしてやろうとしたら教師がすっ飛んできて、案の定、職員室に連行されて、停学になったし、クソジジイには拳骨を振り下ろされた。ま、やったことに後悔はしていない。 「あー、すっきりした。あいつ、ピーピー泣いてやがったし、一度、思いっきりやってみたかったんだよなぁ。ああいうの…………」 とファーストフード店の席でチーズバーガーを食べながら天井を見上げる。やってやったという実感はあっても、喪失感がハンパない、今後、どうやって教室に向かおう、危険人物じゃないか。 「ま、いいか、私、友達いないしなぁ」 ハッハーと笑ってみながら、視界の隅っこに中学生の制服を着た女の子がこっちにやってきていた。いかにも世の中、なめ腐ってますという態度の女の子だ。サボってますよ。だから何か? みたいな開き直った態度だ。うん、既視感がある。私もそうだったからだ。 「やぁ、お嬢ちゃん、学校サボって買い食い? 悪い子だなぁ」 「…………」 「無視かーー、まぁ、いいけどねー、私、実をいうと君の学校の卒業生だからチクることもできるよ。そっちの中学校のまるまるチャンが、ファーストフード店で買い食いしてましたよー、悪い子でしたよーってね」 もちろん、嘘だ。そんなことして私になんの得があるんだ。むしろ、中学校の先生達は私の顔を見て、嫌な顔をするだろう。散々、やってきたからなぁ。義務教育万歳、何やっても許されるんだもん。 「なんなんですか、貴女、こんな時間にいるなんて、あれですか、ニートですか」 「んなわけあるかい、諸事情により学校を追い出された可哀相な高校生だっつーの」 「自分のことを可哀相だなんて、言う人はたいてい、可哀相じゃありませんし、貴女、全然、悲観してないでしょう」 と言いながら彼女は私の向かい側の席に座る。無視したくせに遠慮のないやつだ。ま、そういうふうに図太くなければ中学校の制服でサボろうとは思わないか、単純にアホかもしれないけど。 「貴女、今、とても失礼なこと考えてませんでした?」 「いや、ずいぶんと遠慮のない後輩だなぁと思ってさ」 「私は貴女のこと先輩だとは思ってませんが?」 「思えよ、敬えよ。先輩だぞ」 「たかだか数年、先に生まれただけでしょう。老けるのはそっちが先です」 ハンマーがあったら顔面を叩き割っていただろう。
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