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中学生は嫌そうに顔をしかめたが、否定はできないのかため息をついて、手元にあるジュースに口をつける。一瞬の間をおいて彼女は言った。
「例えば、例えば誰よりも容姿が、ルックスが周囲の誰よりも整っていたらそれは幸せなのかなと思うことがありますよ」
「そりゃ幸せだろ。ルックスが整って居るってことは好かれるってことに違いないんだ。一度は考えたことはないか、漫画や小説のキャラクターが気味の悪いくらいに整って居るのは、誰にだって好かれるためだろ」
「それはフィクションだからでしょう。ノンフィクションは現実は違いますよ。ルックスが整っていたとしても、中身が最悪なら意味がないんですから」
他人に好きになってもらうために、自分を変えるのはめんどくさいという彼女の言葉が思い浮かぶ、あらためて見てみると彼女の容姿は整っているほうだ。男子には好かれ、女子には嫌われそうだ。板挟みというやつか。
「ま、私はそんなかったるいことは考えないけどな、めんどくさいし……」
好かれるのも、嫌われるのも、どっちもめんどくさい。
「ようは考えすぎてるんだ。気楽に構えろ、のほほーんと生きてればそれでいいんだよ」
説教くさくなってしまったが、そう思う。ルックスとか、自分を取り繕う物がなくても好かれる奴は好かれるし、嫌われる奴は嫌われるだろう。私は、過去が重すぎて軽くどん引きされるけど、これは関係ないか、わざわざ話してもそれは同情を誘うだけの不幸自慢だ。ダサいし、そうやって軽く言える程度は不幸じゃない。不幸にしたがってるだけだ。不幸自分を演じようとしてるだけだ。
「別に考えすぎてませんけどね、ちょっと愚痴を言っただけですから」
「あっそ、そりゃよかったな。すっきりしたか?」
「貴女と話して胸にヘドロか溜まりました。最悪です」
「そりゃよかった。お前の気分が最悪になって私は嬉しくてたまらないぜ」
「性格、悪いですね。そんなんだから嫌われるんですよ」
「別に嫌われていてもいいんだよ。いや、嫌われているほうがいいんだ。褒め称えられて好かれているより、嫌われて放置されているほうが案外、心地いいことごあるもんだ」
過去が、過去なだけにいろいろ詮索されるのは嫌だという気持ちがある。下手な慰めよりも、一定の距離をとっていてもらうか、普通に接してくれたほうが案外嬉しかったりする。
「そうすると生きている」
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