コインロッカー

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ってかんじがするんだよ」 生きている、産まれてきてよかったと思う。嫌われるために生きてきたと感じられることが嬉しい。特殊な性癖だ。 「意味がわからないんですけれど?」 「わからなくていいよ。そもそも、今日あっただけで相手の全てを理解できるわけねーだろ」 中学生が愚痴を吐き出すために、私を話し相手にしたように、私もこいつを暇つぶしの相手にしている。それだけのことだ。たぶん、ここを出ればすぐに別れてしまう関係だ。友達になんてなれないし、なりたくない。友達になるってことは相手のどこかを好きになることだからだ。 「ですね。そういうんだったら、こいつは私の親友とか言ってる奴を見ると、思わず鼻で笑ってやりたくなりますもん」 「あーわかるわかる。そういうやつって決まって相手の都合のいいところしか見てないもんな」 人間の最悪なところだ。自分の都合のいいことは受け入れても嫌なことは目を伏せて見て見ぬふりをする。親友って奴は互いを好きでいるための鎖だ。腐りきった鉄の繋がりだ。鎖だけにな。 「そういうのが居心地がいいんでしょうね。互いに傷を舐め合っていれば楽しいでしょう」 「嫌な関係だな。友達なんていらねー」 昨日のボス犬女とそれの取り巻きの関係を思い出す。あれは、親友と言うか、友達でもなく、主従関係みたいだけど、あいつらからしたら仲良しなお友達なんだろう。まぁ、今からどうなるかなんて知らないけれど。蛇の頭を切り落とせば動かなくなるけれど、蜥蜴のように新しい尻尾が生えてきそうだ。そう考えてみると気味が悪い。凶悪で、残忍だ。何が残忍かっていうと切り落とされた頭や尻尾は捨てられて、忘れられるんだから、まぁ、切り落としたのは私だけれど。 「ねぇ、貴女は嫌われても構わないと思ってるようですけれど、その相手から殺意を向けられたらどうするんです?」 「逃げるね。死にたくないし、殺されたくもない」 「即答ですか。いっそすがすがしいですね」 「当たり前だろ。私は生きていたいけれど、死にたくねーよ。もしかしてお前、私が自殺志願者だとでも思ってたのか?」 「思っていませんよ。でも、貴女を恨んでいる人をいることを忘れないほうがいいと言ってるんですよ。昨日、カッターナイフ、片手に暴れまわったそうじゃないですか」 中学生がニヤリと笑う。いつの間にか人気がなくなっていた。誰もいない、客も店員も誰も居ない。誰もいない……
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