錯覚

3/39
前へ
/39ページ
次へ
貴之と別れてから、私はなるべく早めに出社している。 早く来て、カウンターから社員のみんなに朝の挨拶をするんだ。 今日も早目にロビーに下りる。 次々に社員が出社してくる。 「おはようございます。」 「おはようございます。」 「おはよう。」 「おはようっす。」 挨拶の行き交うロビーを好きになったのも事実。 そう思っていると、成瀬さんがやってきた。 彼の出社もこの頃は早い。 「おはようございます。」 「おっす。…ちゃんと帰れたか?」 意外だった。 …心配…してくれたのかな…。 「当り前でしょ?子供じゃないんだから。」 なのに、私はこんな言い方しか出来ない。 …お酒。 …お酒の力が欲しい。
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!

977人が本棚に入れています
本棚に追加