幽霊との出会い

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  田舎でも都会でもない俺の住む街は、何一つ事件もなく、変わった名所もなく、そこそこに人がいて、穏やかに過ごすためだけに設計されたといっても過言ではないくらい平和な街だ。  多分街に住む人は漏れなくそう感じていることだろう。   そのくらい、何もなかった、深夜営業の店に強盗が入るなんてどこか別の国のことのようだし、チンピラや、悪餓鬼もいない、   平凡で、平和な、平々凡々な…、きっと戦後に日本が目指した国の形はこの街そのものではないだろうか、そんなことを考えながら見上げた空は、もう数時間前に陽が沈み、地上との境目も分からなくなっていた。 高倉進は寂しくなった道を一人歩いていた。バイトの帰り。あと、10分もすれば自宅に着く。   ふと、視界に街灯の灯りが入ってくる、シンと静まり返った住宅街を照らす街灯は、どことなく、不安げに人気がない道を佇んでいる。 微かに、錆びたような匂いがした…   ドサッ、と何かが落ちる音がした。  それは、バイト先で買ったコンビニ弁当と茶が入ったビニール袋。このあと、自宅に着いたら食べる予定にしているものだ。もちろんそれは、自分の手から落ちた物で、手の力が抜けて落ちたことに気づいたのはドサッという音を聞いてからだった。   数メートル離れた街灯の下に人が倒れていた。   背格好からするとまだ若い女性のように見えた。   事故…?それとも事件…?どっちにしても、   「大丈夫ですかっ!?」   慌てて駆け寄りうつ伏せの体を揺する。手が生暖かい液体で濡れる。驚いて見ると、手のひらにべっとりと血が付いていた。   「……ッ!!」   街灯の薄暗い灯りでは分からなかった血が、近くに来ると赤々と地面を色付けていた。   むせかえるような血の匂いが辺りに漂っていた。こんなに大量の血を見るのは生まれて初めてで、この状況が呑み込めず、一瞬固まった。手のひらに付いた血液が指紋の後を残すように下へとゆっくり流れていく。
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