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「ほら、脈、触ってみてください、ありませんから。」
そう言って、女の子は細い腕をぐいっと差し出してきた。
「そんなわけないでしょーが…」
ため息をついて、女の子の手をとる。こんなことをしているうちにも腹部からはドクドクと血液が流れて出ていた。
早く病院に行かないといけないのに…
女の子の脈は感じられなかった。多分もとから脈が弱い方なのだろう。
「脈、ずいぶん弱くなっているよ、ほんと、やばいから、早く病院に、行かないと…」
そう言うと女の子は少し困った顔をした。
いきなり彼女は俺の前に立ちはだかった、
「な、何…」
刹那、彼女の右手が俺の頭を貫通する。ヒヤッとしたものが頭を通っているような感覚がした。驚いて尻餅をつく。
は?いま、手が頭を貫通した……?まさか……そんな
「………………。」
俺が声を出せないでいると、女の子は自分の右手を一瞬悲しそうな表情でみた。
そして、先程と同じ言葉を繰り返す。
「……私、死んでるんです。」
女の子は微かに、笑っていた。自嘲気味な口元にはまだ血が付いていた。
仄かに血の匂いがした。
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