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「一体何人いるのよ、ここは」
ルカは苛立つように吐き捨て、後退してきたヤチルの隣に並ぶ。
しかし言葉とは裏腹に表情に焦りは見受けられない。
「ま、俺らの役割は果たしただろ。後はあっちに任せるかな。武器庫も尽きたようだし」
後退中に拾い集めた武器で敵をあしらいながらヤチルはルカを庇うように立つ。
「なに言ってんの。まだまだあるわよ。それにあんたに合わせてナイフ使ってやったんだからね。本職は私違うし」
実際、ルカの技は攻撃と共にヤチルへの武器提供も兼ねていた。
ジリジリと後退しながらも未だ無傷でいられるのはヤチルの使い慣れた短刀サイズのナイフがルカによって大量に広間にばら撒かれたからだ。
「なら突っ立ってないで手伝ってくれ」
拾ってきた武器も状況に合わせて自由に変えられるほどは豊富ではなかった。
「あら、一人で勝手に突っ走ったのはそっちじゃない。それに、多分そろそろよ」
言った瞬間、ズシンと広間に衝撃が走る。敵の顔が混乱に歪む中、ルカとヤチルは安堵の笑みを漏らしていた。
「ほらきた。入口まで戻るわよ」
言いながらルカは腰裏のポーチに手を伸ばし、小さく巻かれた細糸を取り出す。
「了解」
短く答えてヤチルは長剣を大振りし道を開くと投げ捨て、ナイフを数本拾って来た道を戻り始める。
当然追いかける敵との間にルカがすっと割り込む。
「残念。行かせないわよ」
手には先程の細糸、所謂、鉄糸と呼ばれる道具が装備されている。
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