1人が本棚に入れています
本棚に追加
本当なら罠などに使うそれを、ルカは両腕に巻き付けていた。
「東雲流、秋雨」
短く呟くと、途端に巻き付いた鉄糸が意思をもつように解かれていく。
「大蛇!」
ルカが叫んで腕を振るえば鉄糸は岩をも切り裂く凶器となって敵に襲いかかる。返り血すらも弾き返し、大蛇のごとく辺りを波立つように刈り尽くた鉄糸は、一瞬のうちに再び腕に巻きつく。そのまま踵を返しヤチルの後を追い入口へと急いだ。
入口手前でルカを待っていたヤチルはルカの姿を認めると苦笑いし、怖い怖いと呟く。
「黙りな。ヤグモたちが動いたんだ。私らの仕事は残党狩り、ってとこでしょ。ここからが本番よ」
言いながらも鉄糸を展開し、通路へと追ってきた敵を確実に仕留めていく。
「広間の奥、まだまだ広そうだったが、ヤグモ一人で大丈夫か?」
一方先ほどまでと違って遠距離の攻撃手段を持たないヤチルは攻撃をルカに任せ、壁に寄り掛かっていた。
「そんなに心配なら加勢しに行けば?ここにいても役に立たないんだし」
「おい、冷たいぜ、ルカ。その物騒なもん仕舞ってくれたら俺にもやりようがあるんだがな」
「こんな狭いところであんたが暴れたらシャレになんないでしょうが」
不機嫌にヤチルを睨みつけると懐から数本ナイフを取り出す。
「これぐらい自分で持ち歩きなさいよ」
投げつけるようにしてヤチルに渡すと再び鉄糸を操り始めた。
「流石武器庫。どこからこんなに出てくんだか」
最初のコメントを投稿しよう!