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その足音が角を曲がりこちらを目に止めても尚リョウは悠長に模様を消して居た。
「一人か、随分と舐められたものだな」
一人の男がそれを見て唸るように吐き捨てる。
「そちらこそ、お頭が盾役の子分数人引き連れて裏口からトンズラしようなんて、舐めてくださいって言ってる様なものっすよ」
と、一切の視線を向けずに口先だけで答える。
「御託はいい」
男達からみれば武装もしていないその小柄な少年は隙だらけ。
しかし流石に、だからと言って舐めてる訳ではない。
ばれはしないはずであったが、ここは明らかに非常用通路。道は一本。つまり。
「押し入ってきやがって」
「ご明察」
口先に笑みだけ貼り付けて、やっと男達の方を向いたリョウは、すっと右手を前に翳した。
「チッ」
舌打ちと共に盗賊は腰の曲刀を抜き放ち、数歩の距離を埋めにかかる。
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