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ぴちゃり、と。
小さな音を立ててソレは私に降りかかった。続けて降りかかってくるのは生臭い匂いと、確かな重み。
「よかった……」
ソレは掠れた声で呟いた。いや、呟いたかどうかは定かではない。そんな気がしただけなのかもしれない。
ひゅう、と喉を鳴らしたソレはゆっくりと顔をあげ、よかった、と。今度はしっかりと口にした。
「ごめんね、ありがとう。……ごめん。」
そんな支離滅裂な言葉を口にしながらソレはゆっくりと私の顔に手を伸ばす。
ああ、私は何故、ここにいるのだろうか。
何故、こんなにも苦しい。
何故……。
何故、目の前のこの人は、死にかけているのだろう。
「……」
何故、問いかける声は形に成らずに消えていく。
伸ばされた手にそっと触れるとその人は驚いたように目を開き、それから、ふわりと微笑んだ。
何故だかそれだけで、全てが救われた気がした。
「ありがとう。」
それだけを、伝えられたら。
焔の様に移ろうものたちへ。
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