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目的地は崖の真下に当たる開けた場所。
「しばらく待機かな、こりゃあ」
不機嫌そうにヤグモは頭頂で束ねた髪を払い、近くの木に寄り掛かった。開けたところに出たことで、日を浴びた彼の紅い髪は一層輝いている。
「任務中ですよ」
「知ってる」
「注意はしましたからね」
「うん」
「はぁ……」
深いため息をついてリョウはドサリと座り込む。
「ふふっ。リョウちゃんリョウちゃん、任務中だよ」
先程までの不機嫌を一瞬で取り払い、一足でリョウの隣まで移動すると面白そうに問いかけた。
リョウはちらりと横を見ると再び溜息をつき、
「知ってます」
と一言だけ返した。
ヤグモはリョウの隣にしゃがみ込み、それきり言葉は発しなかった。
しばらくの間二人のうちに沈黙が横たわる。手持ち無沙汰からか、リョウは手の届く範囲の土から軽く小石を払い、指先で幾何学模様を記していく。ヤグモはちらりと書きかけの模様を確認し、少し困ったような笑みを漏らした。
「ルカさんたち、手間取ってますね。やっぱりこの任務、サイの奴も連れてくれば良かったです」
思い浮かぶのはルカの弟である仲間の一人。
書き終えた模様を消しながら呟くと、服についた汚れを叩きながら立ち上がり、目線でヤグモを促した。
「ヤグモさん、作戦変更です。皆さんはサイみたいな事は出来ませんからね」
「ボクらじゃ役不足ってことかな?」
「そうゆう訳じゃないっす。サイはサイの、皆さんは皆さんの得意分野がある、ってだけです。」
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