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「ん、そうだね。で、作戦変更ってことはこのまま突っ込んでいいのかな?」
リョウに続いて立ち上がり、いたずらっぽく目を細めたヤグモはそのまま断崖へ近づいていく。
「まあそんな感じです。むしろこっちの方が予測してましたけどね」
「ああ、だからリョウちゃんボクと一緒なんだ」
最初からそのつもりだったんじゃない、と小さく笑うと、
「お好みは?」
腰に下げられた二本の曲刀を一気に引き抜く。
その様子をみたリョウはそれまでの憮然とした表情を一気に消し、
「ヤグモさんなら分かってますよね」
ニコリと、別人のような顔を見せた。
「おーけー。任せなさい。」
リョウはそのままヤグモとの距離を取り、反対にヤグモは断崖から数歩のところで立ち止まる。
右の刀は後ろに、左の刀は前に。独特な二刀の構えを取り、すっと腰を落とす。
「炎華乱舞し氷華散る。一閃、華雅」
舞うように動いた二刀は焔を撒き散らし、崖を両断、刹那、無音を作り出す。
しかしそれも一瞬のこと、次の瞬間、激しい騒音と共に斬撃と炎で傷ついた断崖ががらがらと崩壊していく。それに合わせヤグモが上に向かい右の刀を一振りすれば、彼を避ける様に崩落していった。次第に当たり一面は土砂で散らかり、崖は見る影も無い。
まだ破壊し足りないと暴れる炎は先へと進み、崖の中に隠された空間への道筋を作り出して行った。
「こんなもんでどうかな、リョウちゃん。」
刀を持ったまま、振り返り、問いかける。
巻き込まれぬよう後ろで見守っていたリョウは消火してくださいよ、と苦笑いしながら近づいた。
「一閃、切華」
右刀の一閃で辺りの炎を消し去ると刀を納め、リョウを待つ。
「相変わらず派手ですね、ヤグモさんの技は」
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