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「サイ君に比べたらね、そりゃ派手だと思うよ?」
思い浮かべるのは闇に溶け込む黒い姿。
「にしても、この臭いどうにかならないんすか」
臭い臭いと近づいたリョウは未だに土の中で燻る火を踏み消していく。
「まあ、本来燃えないものまで燃やしちゃってるからね。現実ってそんなもんよ。ヒーローも汗かきゃ臭いの。」
「誰がヒーローですか。誰が。自分ヤグモさんと違って鼻効くんですから」
やれやれと土を蹴飛ばしたリョウは、ヤグモの作り出した道に躊躇いもなく踏み入った。
「ルカさんたちは気づいたでしょうかね」
そのまま進んでいくリョウの後を追い、ヤグモは不思議そうに首を傾げる。
「気づいたか、って。気づくと思ったからボクにやらせたんでしょ?」
それに、と付け足す。
「気づけると思ってリョウちゃんが連れてきた二人じゃない」
「そう……ですね。自分が選んだんですから、これぐらい対応してくれないと困ります」
小さく笑ってリョウは少し足を早めた。
ーーー
遡ること数分、ヤグモとリョウと別れた二人は迷わず目的地へと向かっていた。
「ここね、奴らのアジトは」
林の途切れた先、断崖に僅かに空いた入口を発見する。
「入口自体は巧妙に隠してあるが、周りの土が踏み固められて全く草が生えてない。おっちょこちょいと言うかなんと言うか」
木々に身を隠しながら入口を注視する。幸いと言うべきか、辺りに人の気配はなく、穴からも全く物音はしなかった。
「こちらにとっては好都合よ。さっさと済ませましょ。あまりもたつくとヤグモがキレかねないわ」
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