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「リョウがついててそんな事はないと思うが、早いに越した事はないか。俺が先にいく。ルカは合図を待て」
言うが早いか動きだし、林から身を出すと一息に入口真横に身を寄せた。
相変わらず何の音もしない。
罠の可能性も考慮しようと思い、ルカに手を振って合図する。
どう?
ヤチルと同じくらいの速度で入口の反対側まで来たルカは、口の動きだけで問う。
ヤチルは右人差し指と左人差し指を交差させる動作で返す。意味は、罠ノ可能性アリ。
それを受けルカは眉間にシワを寄せるも、右手の指を1、3、2の順に出して見せる。注意シナガラ作戦続行。
軽く頷いてヤチルは慎重に中へと侵入した。
中の暗さに目が慣れると、そこが人の手で掘られていることに気づく。通路はだんだんと広くなり、最終的に広場のようなところへ通じている事を確認し、入口から垂らしていた糸を手早く巻き取る。
糸が巻き取られた事を確認した後、ルカはヤチルのところまで移動し、隣にしゃがみ込んだ。
ルカの目が慣れて来たところでヤチルは右手を前方に向け、左手で空を切る動作をする。前方ニ人ノ気配アリ。
その後サインではなく立ち上がり、腰の武器に手をかける事で交戦の意を示した。またも眉間に皺を寄せたルカをちらりと一瞥した後、一気に広場へと躍り出て行く。
「ヤチルっ。……はぁ、これだからあいつは。隠密はどうしたのよ隠密は」
残されたルカはここにはいない自らの弟を思い、深いため息をつく。
しかし、こうなってしまっては仕方が無い。弟と同じ漆黒の髪を揺らし、立ち上がると同時にヤチルの元へ加勢しに行った。既に広場からは侵入に気づいた敵と乱闘状態である事を知らせる金属音が響いている。
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