第六章 優しさ

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紗江理は我に返ったように立ち上がった。 「あ、うん、じゃあお言葉に甘えて、お、お邪魔します」 そう言って、悠太の向かい側に腰を下ろした。 真正面に座る悠太と目が合うと、再びドキっと胸が鳴った。 沈黙に耐えられず、紗江理は口を開いた。 「えっと、横村くんはいつもここで勉強してるの?」 「……うん、土屋さんはいつもは自習室?」 「うん、今日は自習室いっぱいで席が空いてなかったから、こっちに来たの」 そう言いながら紗江理は、自習室空いてなくて逆によかったなと思った。 こうして悠太くんと会えるなんてラッキーだ。 「そっか。……俺、自習室ってダメなんだ。静かすぎると逆に集中できないんだよね。ここは適度に騒がしいし」 そう言うと、悠太はテーブルの上のペットボトルに手を伸ばして、ごくっと一口飲んだ。 何でもない動作なのに、彼の一挙一動すべてが、余裕があって色っぽく見える。
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