77人が本棚に入れています
本棚に追加
その日から二人の関係は少しずつギクシャクするようになった。
あんなに優しく良き理解者であった彼が、
紗江理の気持ちをなかなか理解してくれなくなった。
婚期をとうに過ぎた紗江理に、母親は早く結婚しろと言う。
けれど、紗江理はまだ結婚したくなかった。
今、研究がいいところなんだ。
邪魔をされたくない。
しかしその一方で、続々と結婚して幸せな家庭を築いている同級生たちの姿を紗江理は見てきた。
結婚に対する焦りがない、と言ったらウソになる。
紗江理は考える。
今後も芳人と交際を続けて、
そして、彼と結婚することになるんだろうか。
このままでいいんだろうか、と。
彼となら結婚したい。
そう思っていた時期もあった。
しかし今はこの男と結婚して幸せになれるイメージがどうしても持てなかった。
なんでこうなっちゃったんだろ。
気が付くと紗江理はいつの間にかマンションの前まで来ていた。
はぁ…と大きなため息がこぼれた。
冷静に考えると、連絡もせず約束を破った私が誰が見ても悪なったかな……。
そう考えた紗江理は
謝罪と今日会いたいという気持ちを書き、送信ボタンを押した。
最初のコメントを投稿しよう!