第一章 目覚め

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---8:40 紗江理は研究室に再び戻った。 他の研究員はまだ来ておらず、がらんとしていた。 椅子に座るなりパソコンを開き、言うべきポイントを思い起こしながら、ブツブツとプレゼン発表の練習を始めた。 はたから見たら相当怪しいが、 紗江理は大学時代の恩師に ”プレゼンや論文は声に出して確認すること” と教え込まれていたいたため、今になってもそれを実践している。 紗江理が最後のスライドを確認し始めた頃 「先輩!おはようございます」 凛としたかわいらしい声が室内に響く。 振り返ると、艶のあるさらさらミディアムストレートヘアの女性が立っていた。 「あ、猿渡さん、おはよ」 彼女は、紗江理の5個下の後輩である  ”猿渡奈菜”だ。 この研究所に勤める女性の多くが、余裕がなくなり途中からオシャレを放棄する中、彼女は珍しく入社当時の女子力を維持していた。
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