第一章 目覚め

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食後に紅茶を飲んでいたころ、 バックの中で携帯のバイブが鳴った。 画面を見ると芳人からのメールだった。 『 研究お疲れ様。 昨日は俺も取り乱して悪かった。 今日は何時なら大丈夫?』 昨晩のメールとはうって変わって優しい文面であった。 『いつもの場所で19時に待ってます』 と返信した。 バッグに携帯をしまうと、ため息がこぼれ落ちた。 それを見ていた奈菜が、 「今度はどうしたんですか?先輩」 と心配そうな表情を向けた。 「え?」 紗江理は思わず聞き返す。 「ここ」 そう言って奈菜は、体を乗り出し、テーブル越しに座る紗江理の眉間に人差し指を当て、 「眉間にしわを寄せてましたよ」 と言った。 紗江理は、自分では気づかないうちに、苦渋の色を浮かべていたようだ。 「メールですか?誰から?」 菜奈は紗江理の目をまっすぐ見て言った。 「いや、ちょっとね…ここんとこ彼とうまくいってなくて…どうしたらいいんだろ…」 紗江理はボソボソと呟いた。 すると、 「……え?彼……?」 菜奈はそう呟き動きを止めた。 固まってしばらくしてから 「えええ!?土屋先輩って彼氏いるんですかっ!?」 菜奈は腰を浮かせて身を乗り出した。 突然、大声をあげたもんだから、数名の客と店員が何事かとこちらを見ていた。 本当に驚いたらしい。 菜奈は、目を見開いて、口をパクパクさせていた。 昔飼ってた金魚みたいだな。 と、紗江理は思った。 「…あれ、言ってなかったけ?」 「聞いてませんよ!初耳です!」 菜奈はなぜか嬉しそうだった。興奮したのか、顔が少し紅潮している。 これは、今年一番の大ニュースだわ。 と菜奈は呟いた。
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