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食後に紅茶を飲んでいたころ、
バックの中で携帯のバイブが鳴った。
画面を見ると芳人からのメールだった。
『 研究お疲れ様。
昨日は俺も取り乱して悪かった。
今日は何時なら大丈夫?』
昨晩のメールとはうって変わって優しい文面であった。
『いつもの場所で19時に待ってます』
と返信した。
バッグに携帯をしまうと、ため息がこぼれ落ちた。
それを見ていた奈菜が、
「今度はどうしたんですか?先輩」
と心配そうな表情を向けた。
「え?」
紗江理は思わず聞き返す。
「ここ」
そう言って奈菜は、体を乗り出し、テーブル越しに座る紗江理の眉間に人差し指を当て、
「眉間にしわを寄せてましたよ」
と言った。
紗江理は、自分では気づかないうちに、苦渋の色を浮かべていたようだ。
「メールですか?誰から?」
菜奈は紗江理の目をまっすぐ見て言った。
「いや、ちょっとね…ここんとこ彼とうまくいってなくて…どうしたらいいんだろ…」
紗江理はボソボソと呟いた。
すると、
「……え?彼……?」
菜奈はそう呟き動きを止めた。
固まってしばらくしてから
「えええ!?土屋先輩って彼氏いるんですかっ!?」
菜奈は腰を浮かせて身を乗り出した。
突然、大声をあげたもんだから、数名の客と店員が何事かとこちらを見ていた。
本当に驚いたらしい。
菜奈は、目を見開いて、口をパクパクさせていた。
昔飼ってた金魚みたいだな。
と、紗江理は思った。
「…あれ、言ってなかったけ?」
「聞いてませんよ!初耳です!」
菜奈はなぜか嬉しそうだった。興奮したのか、顔が少し紅潮している。
これは、今年一番の大ニュースだわ。
と菜奈は呟いた。
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