第一章 目覚め

3/26
前へ
/151ページ
次へ
ブラインドからこぼれる優しい光が、紗江理をそっと起こした。 どうやらプレゼンのスライドの仕上げをしていた途中で寝てしまったらしい。 パソコン画面では、スクリーンセーバーがせわしなく動いていた。 突っ伏して寝ていたせいか、右腕の血行が悪い。 しびれて感覚がない。 うーんと、大きく伸びをし、専門書やら論文やらが散在している机の端を見る。 卓上時計は6時36分をさしていた。 会議までまだ余裕があるな。 寝汗でしっとりしたシャツが気持ち悪いし、一度シャワーを浴びに家に帰ろう。 携帯と財布だけが入ったミニトートを持って、紗江理は部屋を後にした。 紗江理の住むマンションは会社の研究所から歩いて10分のところにある。 研究に没頭するとあっという間に深夜になってしまうので、すぐ寝に帰れるようにと5ケ月前に引っ越してきた。 しかし、最近は帰ることも面倒になり、 研究室のソファーで夜を過ごすことも多い。 紗江理には時間がなかった、 少しでも研究に時間をあてたかったのだ。
/151ページ

最初のコメントを投稿しよう!

77人が本棚に入れています
本棚に追加