第一章 目覚め

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研究所のエントランスホールを抜けたところで、 歩きながら携帯電話をカバンから取り出した。 着信履歴8件、メール15件。 やけに多いな… 受信トレイを開けると、差出人はすべて同じだった。 "From 堀田芳人” 紗江理はハッとした。 ……しまった!またやってしまった! 交際中の彼から昨晩ディナーに誘われていたことを忘れていたのだ。 約束の時刻からもうかれこれ10時間以上経っている。 あー。どうしよう……。 研究室に入ると携帯はほとんど見ないし、サイレントマナーだから電話がきても気づかないのだ。 恐る恐るフォルダにたまったメールを開く。 『今、どこ? 19:48 』 『実験長引いてる?何時に終わる? 20:10 』 『まだ?終わらないの? 20:32 』   はぁ… 罪悪感に襲われ、思わず大きなため息がこぼれる。 これ以上読みたくない…。
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