井上誠一という男

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(この人はいつも何も聞かない) 他の店でアルバイトをしていた時、他人の彼女を盗ったと言いがかりをつけられた。 その女性とは一言も話したことさえなかったのに。 結局言いがかりをつけてきた相手を殴ってその店をクビになった。 "派手に騒ぎを起こしたそうだね" バイトの面接を受けに行った時、店長は全てを知っていた様子だった。 それでも自分を採用してくれて、正社員にまでしてくれた。 だから店にいる間は、優秀なウエイターであり続ける。 この人の優しさだけは、裏切らないと決めたから。 午後16時の開店と同時に、髪型と身だしなみを整えた誠一はフロアに出る。 「いらっしゃいませ!」 午後18時を過ぎるとディナー目当てのお客で店は満員。 フロアも厨房もフル回転で仕事をこなす。 「ありがとうございました!」 午後20時を過ぎると、今度は一杯飲みに来る客が多くなる。 ここからの時間帯はバーテンダーを2人体制にして臨む。
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