井上誠一という男

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「お待たせいたしました」 8番テーブルに座っていた女性客グループの一人が彼に声をかけた。 「ねえ井上さん、今晩の予定は?」 給仕を終えた彼は、悠然とした笑顔を浮かべ、彼女の耳許で囁いた。 「きみの為に空けてあるよ。閉店後店の裏で待ってて」 その光景を見て、二人のバーテンダーは揃って顔をしかめた。 「アレさえなければ・・・」 「・・・ですね」 彼の名前は井上誠一。25才。 業務面では完璧、かつ職場内の信頼も篤い。 ただし素行には問題あり、という評判がもれなくついてくる男。 抗いがたいその魅力にはまった女性―多数。
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