井上誠一という男

6/12
前へ
/46ページ
次へ
襟ぐりの深い白いTシャツの上からネイビーのジャケットを羽織る。 自分の方を見ようともしない誠一に、相手の女性は呆れたように微笑んだ。 「噂通りなのね。ヒドイ男」 「本命は作らない主義なんだ。でも、良かったでしょ?」 「うん。ソッチは噂より良かった」 慣れた手つきで頬を引き寄せ、軽く唇を重ね。 「じゃあね」 腹立たしい程に爽やかな笑顔で彼は別れを告げる。 「またのご来店、お待ちしてますよ。お姫様」 そして、振り返ることもなく女性の部屋を後にした。
/46ページ

最初のコメントを投稿しよう!

82人が本棚に入れています
本棚に追加