井上誠一という男

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帰宅してすぐに洗濯機を回し、シャワーを浴びてから遅めの朝食をとる。 いつも通りのタイムスケジュール。 仕事のある日はこうしていれば、一日があっという間に過ぎてくれるから楽だ。 誠一は、シャツにジーンズというラフな格好で台所に立った。 特別料理が好きな訳ではないけれど、自分で食べる分くらいは作れる。 完成したパスタとドリップコーヒーを、テーブルがわりに使っているキッチンカウンターに乗せる。 ポータブルオーディオの電源を入れて、適当に選曲すると、サイモン&ガーファンクルの歌声が流れ出した。 "Don't talk of love Well, I've heard the word before" (人を愛したことがあるのかだって? 昔はそんなこともあったけどな) "It's sleeping in my memory I won't disturb the slumber of feelings that have died" (もう忘れちまったそんな記憶を呼び覚ましてどうするんだよ) "If I never loved I never would have cried I am a rock. I am an island" (人を愛したって傷つくだけさ。 俺はただの岩だ。ただの島だ)
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