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やがて18時を回り、ゲームショーは終わった。
終了間際に、羽振から藤井へ別の会社の人と食事をすると連絡が入った。
藤井は予期していたようで、簡単に承諾すると女二人だけでホテル近くの居酒屋に入った。
さし向かいになった映子と藤井は、ビールで乾杯した。
「佐原さんは、ゲーム好きなの」
「はい、好きです。
あ、藤井さんが作られたゲームももちろんプレイしました」
「わたしだけが作ったんじゃないわ。
わたしは、いちプランナーだし」
藤井は肩をすくめた。
「でも今回OJTでこちらを選んだのは、一つのゲームの成功が会社の業績を赤から黒にひっくり返してしまうほどの大きい力を持っているということに、すごく興味が湧いたからです。
どんな力が、どんな方法が、どんな人がそんなことを起こせてしまうのか。
それが少しでも知りたくてこの部に来たんです」
映子はジョッキを置いて一息に喋った。
「佐原さん、あなた……」
「はい」
「もしかして、すごく真面目?」
「……だめですか?」
藤井はしばらく映子の顔を眺めていたが、やがてにっこりと笑った。
「いや、いいわ。
そうね、それがいいかもしれない。
適正なんて、やってみないとわからないものよ。
佐原さん」
「はい」
「1カ月の間だけれど、よろしくね」
「こちらこそ」
映子はとてもいい先輩に巡り合えたと、心の底から思った。
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