1話

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「はい?」 出張先のビジネスホテルの廊下でのこと。 眼鏡をかけ直していた映子は思わず聞き返した。 「あなたはずっと本社勤務だから知らないかもしれないけど、うちの部長はSE部に来た女性は皆、全員、取り敢えず、手を出すのよ」 手を出す、ということは。 「セクハラですか」 「一般的に言えば」 「知りませんでした。 なんで皆、訴えないんですか」 藤井は少し困った顔をして言った。 「それはセクハラが成立しないからよ」 「?」 「とにかく、ドアを開けないこと。 いいわね」 藤井は再度念を押すと、いまいち理解出来ていない映子を残してその場を離れた。 全員取り敢えず手を出すのよって、なに、そのエロゲ展開。 しかも手を出されたのにセクハラじゃないって、どういうこと。 映子はよくわからないまま、ビジネスホテルの自分の部屋に入った。
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