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狭い会社という閉鎖空間の中、そんな状況は黙っていても知られてしまうものだ。
女性社員を口説き、次々に関係を持っていく羽振を嫌った男性社員は、徐々に異動を希望しなくなっていった。
結果、女性ばかりの組織となった。
それが現在のソーシャルエンタテイメント部だった。
「もっと夢のある理由かと思っていました。
ちょっと残念」
「あはは。
夢を壊してごめんね。
でも彼、女性を扱うのは上手いし、仕事は実績が示す通りだしね。
まあ、なにか勉強して帰ってよ。
せっかくのOJTなんだし」
「それはもちろんです!」
元気よく答えながら映子は、藤井が羽振のことを呼ぶ「彼」という言葉が気にかかった。
羽振を上司としてより、どこか一人の男性として見ているようなニュアンスが感じ取れる。
一時期熱烈に口説かれたというから、今でも羽振に対してなにか思いがあるのかもしれない。
恐るべし、羽振秀見。
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