4話

2/17
前へ
/17ページ
次へ
羽振は下を向いたままの映子に顔を寄せる。 二人の眼鏡が音を立てて触れ合う。 息が頬にかかる距離。 煙草の匂いはしない。 コーヒーの匂いはかすかにする。 男の人の息。 映子の口が、前歯が、開く。 上を向く。 カツン。 もう一度、眼鏡がぶつかる。 映子は反射的に顎を逸らせた。 羽振は顔の角度を変えた。 唇と唇を重ねやすいように。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

40人が本棚に入れています
本棚に追加