売り言葉に…

19/20

160人が本棚に入れています
本棚に追加
/55ページ
「とりあえず珈琲飲んでから…」 目の前に有るマグカップを手にし、一口飲む。 喉からお腹へと温かいモノが入り込み、気分はかなり落ち着いた。 桐島も珈琲を口にして私が話し出すのを待っていた。 静かな部屋にマグカップを置く音と衣擦れの音だけが聞こえて。 この空気感から早く抜け出したくて。 それなりの事を言ってサッサと帰ろうと思った。 「廣川が…」 「え?」 口を開きかけた瞬間、ボソリと話し出した桐島に驚いて隣を見た。 「人前で泣く事の無い廣川がこうなってしまった理由…それ相応の訳があったのでしょう?」 無表情に眼鏡を中指で押し上げていた。 …理由なんて曖昧にして逃れようとしていた事を勘付かれたかと…ギクリとした。
/55ページ

最初のコメントを投稿しよう!

160人が本棚に入れています
本棚に追加