160人が本棚に入れています
本棚に追加
/55ページ
「とりあえず珈琲飲んでから…」
目の前に有るマグカップを手にし、一口飲む。
喉からお腹へと温かいモノが入り込み、気分はかなり落ち着いた。
桐島も珈琲を口にして私が話し出すのを待っていた。
静かな部屋にマグカップを置く音と衣擦れの音だけが聞こえて。
この空気感から早く抜け出したくて。
それなりの事を言ってサッサと帰ろうと思った。
「廣川が…」
「え?」
口を開きかけた瞬間、ボソリと話し出した桐島に驚いて隣を見た。
「人前で泣く事の無い廣川がこうなってしまった理由…それ相応の訳があったのでしょう?」
無表情に眼鏡を中指で押し上げていた。
…理由なんて曖昧にして逃れようとしていた事を勘付かれたかと…ギクリとした。
最初のコメントを投稿しよう!