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「熱が忘れられないのなら…」
無表情に
更に距離を詰めて来る。
これ以上後ろに下がれる訳も無く
身を固くするしかなかった。
そんな私の髪を掬うと
桐島はそっと口付けた。
「無理に忘れようとせずに
熱を上書きすれば良いんです」
「な、何言って…」
至近距離で絡む視線に
言葉が続かなかった。
桐島の訳の分からない結論付けに返す言葉なんて出てこないのだ。
身動きも瞬きもせずに
ただ桐島を見返す事しか出来なかった。
そんなだからか
心音がやけに早く感じて
息苦しい。
「冗談です。気の無い相手とそんな事をしても虚しいだけですよ」
浅く息を吐くと
私からあっさり離れて
距離を取った。
「そ、そんなの当たり前よ!」
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