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今にも漏れ出そうな声
必死に押し殺しながら荷物を拾い集めた。
キーケースを見た瞬間
『無くさないでね』
合鍵と共に蘇る過去。
「…は」
全てが嘘だったのかと思うと
惨め過ぎて渇いた声が漏れた。
あの時は…
こんな事になるだなんて
予想もしてなかったのに。
屈んだまま拾わずにいた…
いや、拾えずにいたキーケース。
誰かの手が伸びて来て。
「大丈夫ですか?」
「す、すみませ…」
目の前に差し出され
見上げた瞬間。
とりあえず今日は何も良いことなんて起きない日なんだって
改めて思った。
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