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「あなたは本当の所、春季をどう思っているんですか?何とも思っていないなら、ちゃんと態度で示して下さい。それなのに曖昧な言動をするのは、物凄く―――」
卑怯だわ
麻斗は北校舎一階の廊下で杉本を呼び止めると、それだけ捲くし立てて去って行った。正午を過ぎ、丁度膨れ上がった空気が体に纏わりついて、動きに影響が出てくる時刻だ。去って行く後姿に一度声をかけようと口を開いたが、一瞬の逡巡の後、再び唇を合わせた。杉本は目の前にある準備室のドアノブに手を伸ばしたが、中々腕に力が入らない。どう仕様もなく体が重かった。
「卑怯か・・・確かにそうかもしれないね」
潮時だな
人形は僅かに肩を上げて唇の端で笑い、静かに息をひとつ、吐き出した。
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