第1章

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初めはそう、似ていると思った。 何処がと言い切れるものではなかったが、ただ春季の中に自分と同じ感情、思考を感じたのだ。 だから興味を持ったし、自らわざわざ彼の関心を惹き付けようとしたこともある。投げかけられる問いにどう行動し、どう返答するのか。微かな緊張感を孕んだ応酬が心地良かった。 同ジココロ。 同ジオモイ。 この世で一番嫌いな存在。醜く、悲哀に満ちている自分。 杉本は、春季を観察することで、恐らく最も客観的に自己を振り返ることができるだろうと考えていた。 しかし、実際は違った。 彼は杉本にはないもっと多くの美しいモノを持ち、今まで触れたことも無い、突き抜けるような発想を口にした。 ナゼ・・・・・? そして何時からか、ソレがとても尊いものだと感じるようになった。 気が付いたら目が離せなくなっていた。 だから、 サヨナラだ 人は何時か失ってしまう可能性があると分かると、自らそれを切り離す。 疵はなるべく浅いうちに、取り返しがつかなくなる前にと。 そう、人間とは・・・・酷く臆病であるが故に、最大の防御をとる動物なのだ。
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