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二日後。
放課後になって準備室にやってきた春季に向かって、杉本は話があると切り出した。
「何ですか、改まって」
きちんと対座するように向きを変えて座りなおした杉本に、春季は軽く微笑んだ。杉本はそんな彼を無言のまま見つめ、徐に口を開いた。
「そろそろ呪縛から解放してやろうかと思ってさ。私はずっとお前にね、自由なんだと言いたかったんだ」
「先生、夢の助数詞をご存知ですか?」
唐突だった。
でも、これが春季の思考。誰にも真似できない、とても愛しいモノだ。
「知ってるよ。一片だろう、」
「その通り、ヒトヒラです。何でわざわざそんな風に言うのか俺には見当もつかない。夢も平たいのかよって考えるとちょっと笑えるけど・・・でも、時々物凄く遣る瀬無い気持ちになるんですよね」
「そういう数え方をするのは、雪も花びらも夢も全部―――――」
儚いものだからだろう
「俺はそんな儚いものでもずっと一緒に見ていたいんです。俺は――」
じゃあさ、
春季の言葉を掻き消すように、杉本が声を紡いだ。
「蝶はどう数えるのか、知ってる?」
ずっと前に、『この世で一番好きなモノはカラスアゲハで、嫌いなモノは人間だ』って・・・言ってなかったっけ?
「一匹」
「違う、一頭だ。お前本当に蝶が好きなのか?」
俺はそんなものより
あなたの方が好きです
一瞬眩暈を覚えた。
ああ、もうだめかもしれない・・・・・・・
・・・・・・こんなにも、自分は・・・・・・・
「もう一度言いましょうか、」
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