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どれ位経っただろうか。
静寂の中で響いた春季の声が、暮れ始めた夕日に溶け込んで、ゆっくりと杉本の思考を溶かしてゆく。
「どうしたんだ、今日はやけに素直じゃないか」
「素直になれと言ったのはあなたです。それに俺、自分を何時までも押し殺していられる程大人じゃないんで」
「こんなにでかいガキはいらない」
分かっていますよ
「 」
え、何ですか?
春季の耳には杉本の声がちゃんと届いていたが、彼はわざと聞こえなかった振りをした。それは勿論、再び目の前の人物から最高の言葉を聞きたかったからに他ならない。
このまま時が止まってしまえばいいのに
けれど、もしもこれから様々なモノが変化して、どう仕様もなくなったとしても・・・
今、この瞬間の記憶をずっと覚えていられるのなら。
・・・・・それなら構わないと彼は思った。
煌く陽光が窓から射しこみ、痛いほどに二人を照らしていた。
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