とある美容室

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 某郊外に佇む、小さな美容室『ヘアサロン/GC(スラッシュ・ジーシー)』。  その美容室に、働いているあたし『神代霧華』。二年前から、ここで働かせてもらっている。  ようやく、見習いから卒業し、お客様相手ができるようになったところ。技術的には、自信はあるけど、まだまだ経験が不足している。  話術が苦手なので、世間話をかましてくるお客様とは相性が悪い。店長からは、常にテレビやスマホから、世間の話題をストックしておけと注意されるけど、仕事で覚えることが多すぎて、それどころじゃなかったり……。  とにかく、ひたすら終わるまで、こちらに任せてくれるお客様が一番助かる。ずっと雑誌に目を通して、"あたしには気を遣わないで"的な雰囲気を持っているひと……。  逆にアホみたいに話しかけてくるお客様には、代わりのスタッフに頼んでしまう。  『世良義人』。あたしと逆にトークがウリの男性スタッフ。身形も喋りも、軽い……というか、チャラい。セレブなお客様にも、基本タメ語。  常連客は、ほとんど担当が固定されてるので、あたしのような見習い上がりは、一見さんとかの飛び込みのお客様を相手にすることになる。  ……で、あたしが担当したお客様が、次回もあたしを気に入ってくだされば専属になる。  しかし、あたしはまだそこまでの器でないので、固定のお客様はひとりもいません。
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