不幸へのご予約

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 それは、一本の電話から始まった。  店長(アラフォー、独身女性)も、世良さん(一応、先輩)も、カットの最中で手が空いていない。 「霧華ちゃん、電話お願い」  床掃除していたあたしは、店長の一言で電話に飛びつく。 「ありがとうございます、ヘアサロン、スラッシュジーシーでございます」 「明後日の午後五時から、予約入れたいんだけど」  聞いたことあるような声……気のせいだろうか?  男性客。年齢的には、三十代あたり。  PCの予約リストを確認。 「明後日、木曜日の午後五時……ご予約可能となっております」 「それじゃ、その日に予約入れてください」 「ありがとうございます。それでは、お名前のほうお伺いします」 「浅川といいます」 「……!?」  やっぱり……間違いない、あたしの元カレだ。  どうやら、むこうは、あたしだと気づいてないようだけど。 「当店のご利用は、初めてでしょうか?」 「はい」 「分かりました。それでは、ご連絡先のほう、お伺いします」  『浅川暢彦』。もう、顔も見たくない。  別離れて、五年以上も経つ。なんで、今更この男と顔を合わさなければならないのだ。 「……それでは浅川様、明後日の午後五時にお待ちしております」  正直、会いたくはないが……ある意味、これも何かの縁なのかもしれない。  【復讐】という文字が、脳裏に浮かんだ。
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