第1章

7/7
前へ
/11ページ
次へ
天文部の部室は、四階の片隅にある小さな部屋だった。教室の半分くらいの広さだろうか。長細い机とパイプ椅子があり、すでに2人の女の子が椅子に座っておしゃべりしていた。 「加奈ちゃんも優香ちゃんも今日から入部なんだよ」と奈緒が言った。 「はじめまして、樋山加奈です」「平山優香です」 「如月美奈子ですっ」「内山まりなでーす」 それから自己紹介がひと通り終わると、「実はこの天文部は廃部寸前なんだ」と加奈が言った。「私と優香と奈緒ちゃんの3人しか部員がいないの」 「え、先輩はいないの?」と美奈子が聞いた。 加奈の話によると、天文部の3年生にとてもかっこいい先輩がいたらしい。その先輩目当てで部員がたくさん入ったが、彼が今年卒業すると同時にみんな退部してしまったらしい。部の存続には少なくとも5人の部員が必要なのだそうだ。 「えー部員みんなその先輩のファンだったのー?」まりなが聞いた。 「最初はもちろん星が好きで入った部員もいたんだけど、ファンの子たちは星に興味のない子たちばかりだったから、そんな子たちと一緒に活動するのは嫌だって辞めちゃったらしいよ」と加奈が顔をしかめながら言った。 「で、私と加奈のクラスの担任が天文部の顧問だから、入らないかって誘われたの。松本先生っていうんだけど、小柄でほわーっとしてて、めっちゃいい先生なんだよ」と優香が続けた。「私はふらふら歩いてたら、このふたりに勧誘されたんだ」と奈緒が言った。 活動内容は年に2回の合宿と学園祭での発表の他は、ある程度自由に決めていいらしい。 「私、入部しようかな」美奈子が言った。「あんまり星詳しくないけど、星のこと勉強するの楽しそうだし、みんなと仲良くなりたいから」「まりなもー!」 「ほんとーっ!やったあ」 こうして天文部は5人になり、廃部は免れた。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加