出会いの記録

10/24

4人が本棚に入れています
本棚に追加
/26ページ
クルリと再び椅子を回してシオミーは体をこちらに向ける。シオミーは口の端をキュッと結び、 「ほらよ。いつも通りだ、お前はこれを生徒部に出してこい担任には……まあ私から伝えといてやろう」 「うっす、ざっす」 「────ったく」 シオミーは色あせた保健室の天井を仰いだ。突き出してきた紙はざっくり言えば早退の手続きに必要なもの、まあこれで晴れてこの鬱陶しい牢獄とおさらば出来るわけだ。 「『○○君』学校は退屈か?」 「Yes」 唐突な質問にもかかわらず自分は間髪入れずにこれに答えた。いつかの質問と同じだ。無記名アンケートならまだしも友達カッコ仮や担任、親なんかに面と向かってこの質問をされたらこうは答えないだろう。 にっこりぎこちない、自然な笑みを貼り付けて、『そんなことないですよ?』とかぶりを振る自分が簡単に想像出来る。 「……言うと思ったよ」 「いやですねシオミー。毎日決まった時間に登校して。将来何の役に立つのかわからない授業という名目で数時間拘束されて。その上卒業したらもう二度と会わないような人達の機嫌を伺って『やばーい』とか話し合わせて。誰と誰が付き合うだの私今月ピンチだのくだらない話題に付き合って……」 静かな口調で言葉を並び立てる。不満愚痴は頭で考えて言葉に変換するまでもなくつらつらと初めから台本でもあったかのように口から溢れ出た。 「────そんな場所が楽しいなんてすぐさま精神病院への入院をお勧めしますよ」 「……………………シオミー言うな」 シオミーはまた天井を仰ぎ見てポツリと、その一言だけ吐き出した。 これぞ自分とシオミーの関係性がなせる技。シオミー以外ならこうはいかない。流石だシオミー! やったねシオミー! 家族がふえるよ!
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加