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シオミーは慎重に言葉をポツリポツリと落としていく。
「……私はこれでも、こう見えても教師の端くれだ。そう、クソガキ一人がどうなろうと知ったこっちゃない」
「クソガキとか教育委員会に訴えますよ」
「ああ、悪いな『○○』」
シオミーはまた虚空を眺め恐らく自分には聞こえないように配慮してるつもりなのだろうが、はっきり聞き取れる音声で『……タバコ吸いてー』と呟いた。本気で教育委員会に訴えてやろうかこの教師。
それはともかくとして。今日の彼女は酷く歯切れが悪い。もう必要なものは貰ったしこのまま無視して帰ってもいいのだけれどどうも後味が悪い。
帰るに帰れない状況が続き、滅多に自分から話しかけるタイプではない自分は当然としてシオミーも無言を貫いているため嫌な時間だけが過ぎていく。
漫画とかの無言だけど心地よい時間、とかあれ絶対嘘だと思う。だって今めちゃくちゃ空気重いもん!
ジリジリとしたそんな時間が流れてる合間にも彼女は彼女なりになにやら考えているようで、
「『○○ ○○○君』」
ところが唐突に自分のフルネームを呼ばれた。在り来たりな苗字に反面男にも女にも使えるような珍しいしたの名前。苗字が二文字で名前が三文字、
『○○ ○○○』
シオミーはゆっくり口を開く。
「……私は教師だ」
「? 知ってます」
「……そう、教師だ。教師には教師の領分、立ち入らない領域がある」
「はぁ、大変ですね」
我ながら気の無い返事になってしまった。けれどそれも仕方ないこと、何が言いたいのかさっぱり分からない。
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