出会いの記録

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……ふっ。 「現実見えてるとか学校サボって遊んでるどこの高校生の口が裂けたら言えんのか」 立ち上がり、虚しく呟いた。自分は確かにご近所の寂れた商店街を歩いている。でも今『私』はどこを歩いているのだろうか? フラフラとあっちに行ったりこっちに行ったり覚束ない足取りで、風にでも乗って、なんかに誘われて、目標も何もなくただ歩いている。 ────そうそうちょうどこんな風に。 「あ……れ…………?」 突然だった。本当に突然だった。 精神とか立場の問題ではない。視界が歪んだ。今ぐにゃりぐにゃりと景色が波打ち前後左右が分からない。ただ歩き出していたはずなのに、その一歩目が地面を踏み外して宙を漂う。 いやトタタタッと、足が硬いものを蹴る感覚はあるから地に足は付いてるのだろうけれど自分がどっちを向いているのか、自分がどうなってるのか分からない。一種立ちくらみか?と思ったがこれは立ちくらみなんてそんなちゃちなもんじゃない。 「……くっ…………ぁう……」 今にもよろけてこけてしまいそうな自分。端から見れば恐らくおかしな格好をしているんだろう。前後も分からないが揺れる船でバランスをとるようになんとか私はそこに踏みとどまる。 うぇ……。吐きそうだ視界だけじゃない、頭の中もかき混ぜ機でかき混ぜられてシェイクされているかのような。仮にもギリギリ女子高生の端くれ的何かな自分はその矜持で最終防衛ラインは保つが際どい攻防だ。声が言葉にならず音としてしか飛び出さない。 ──ピシッ 「ぁ……ん…………?」 そんなグロッキーな自分の耳に何かがひび割れるような。ガラスか卵かとにかくそんな壊れる音を聞いた。 まともな声を出せない自分の口からは醜い呻き声が漏れ出す。そんな状態ではとてもじゃないが言葉は発せない。 けれど確かにこうも聞こえた。 「あぁっ!居たっ!見つけたっ!見つけたよっ!流石っ私様っ!私様が本腰入ればこの通りだよっ!すごいっ私様っ!可愛いっ私様っ!」 甲高い、胸糞悪いほど可愛いというものを詰め込んだような馬鹿っぽい声で。
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