出会いの記録

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「聞いてるのかい?」 「もちろん聞いてますよ? 色の違いですよね?」 適当にスマホを弄りながらとりあえず体のいい顔を貼り付けて話を聞き流していたら山本が目の前で顔を真っ赤にしてなんか怒ってた。 なんとなく拾ってたワードによると倫理だか哲学だかで気付いたことがあるらしい。 『もう一回言うからね?』と親切にもう一度言ってくれるらしいのでもう一度聞き流そう。あぁ、眠い。 「────何度も言うが君の見ている赤と僕が見ている赤は同じ赤なのか? という話だ」 「んー、ん?」 山本からはちょうど見えないその位置で欠伸を噛み締めていたが、聞き流すつもりだった話が何故か頭に入ってきた。 僕が見ている赤と君の見ている赤は同じ赤なのか? なるほどさっぱり分からん。 やはり哲学か神学の分野の話なのか、山本はキリシタンだっけ。 「ごめんなさい無神論者の自分には分かんないです」 「いやそういう話じゃないよ、なんて言うかな────」 山本は体の前で手をフワフワと動かしたり、なんとか言いたいことを纏めたいようだ。赤は同じ赤なのか、そういう哲学的な話じゃないならどういうことだ? 世界にはリンゴが青に見える人が居る! なんのことやら、違うなそうじゃない。 「……そう、まず白色光が照射されて何か物に突き当たる。そこで特定の色の波長の光のみ反射してそれが僕達の目を通って網膜に焼き付いて脳で読み込んでし、その時初めて僕らは色を認識する」 「……いきなり賢そうな話しないでくださいよ」
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