出会いの記録

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まあ仮にも進学校を名乗ってる学校で理系クラスに所属しているからその程度のことは『当然理解してるよね?』とわざわざ聞かれるまでもない。 「つまり色を色と認識するのは脳が事象をどう処理するかってことだ」 「神は人間が神を認識することで初めてどうたら、っていうなんとか論に似てますね」 「まあ、今回それは関係ないけどね────世界中の人が色、具体的に言えばある光の波長を認識した時全く同じ処理を違う脳で行っている、これって不自然じゃないかい?」 「あ────はい?」 なるほど山本が言いたいことはなんとなくわかった。 山本から見たリンゴも自分から見たリンゴももちろん赤だが山本の思う赤は自分が思う赤と必ずしも一致しない。 言葉にするとややこしいな。 けれどまあ『僕が見てる赤は君の見てる赤と同じじゃない』は感覚的には理解出来た。山本の言う通り世界中の人がいるんだからまあ必ず一人くらいは自分と違う人は居るんだろうな。 「で?」 「え?で、って?」 「あっいや、こんなややこしい話なんとな理解したしたけどその続きはないのかなーって」 「……? 不思議だよね、で終わりだけど」 「────あ、そうなんですか! すいません!」 自分と山本は決して仲が良いわけでは、況してや友達でもない、席が前後というだけでたまに事務的な会話を交わすだけの間柄だ。 にも関わらず朝から延々延々延々延々と続く地獄の耐久レースみたいな苦行に耐え抜きようやく訪れた窓から差し込むポカポカ陽気の中でマッタリ過ごす至福の一時、もとい昼休み。 そんなこの世の全ての幸せを享受しているのかと錯覚するほどの幸福な時を過ごしている自分にわざわざわざわざ話掛けてきたのだから何かあるのかな、と耳を傾けてみたけどただただ自分の発見を人に知ってもらいたかっただけなんだと。 所謂『新手のスタンド使いか!?』されろよ今すぐ。
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