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主任は私を見つめたままで何か言いたそうにしていたが、すぐに視線を逸らしてベットから降りた
「送るよ」
そう言うと散らかった服をかき集めて着替え始めた
「いえ、大丈夫です
ここからそんなに遠くないし一人で帰れます」
そんな私の言葉なんてまるで聞こえてないかの様に寝室を出ると、車のキーを持ち「ほら、行くぞ」と玄関へと行ってしまった
「主任……あの本当に大丈夫……」
「いいから、さっさと来い!」
ちょっとイライラした様子で私の手から荷物を奪うと先にドアの外へと出てしまった
何で怒っているのか、何に対してイライラしているのか……
ついさっきまで私を抱きしめ「双葉」と優しく呼んでくれていた人とは思えない、まるで会社にいる時の主任みたいだ……って……
ああ、そうか……そうだった……
もう夢の時間は終わったんだったね
一夜だけの関係だもんね、事が済んで一夜明ければ私達は上司と部下
こうして送ってくれようとするのは、上司としての責任を果たしてくれようとしているだけ……
私は靴を履き小さな声で「お邪魔しました」と呟き玄関を後にした
鍵をかけると無言でエレベーターへと向かい先に歩き出した主任の背中を見つめながら、何度目かの小さな溜め息を吐いた
車に乗り込んだ後もお互い一言も話さない……
早朝と言ってもまだ4時、こんな時間じゃ歩いてる人どころか、車さえほとんど通らない
まして電車もまだ走ってない
(私、こんな状況でどうやって帰るつもりだったんだろう?
考え無しの行動で今までもよく失敗してるんだよな……
送ってもらって助かっちゃったな)
そんな事考えてる間に私のマンションに着いてしまった
入り口の前で車を止めると、ようやくこちらを見てくれた
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