故郷からの客人

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「ん?どうしたんだブランク」 例え戯れ合っている時でも、ブランクに異変があれば龍希は直ぐに気が付く。言わば、心を通わせた者同士の特権ということである。 「いや、何か引っ掛かる。何かを忘れている気がす……」 「あ、鍋!!」 「!」 ブランクが言い終わる寸前に龍希がそう叫んだ。 振り向いた先にあったのは、火に掛け過ぎてグラグラと沸騰している味噌汁。ブランクは慌ててコンロに飛び付き、火を消した。 「あ、危なかった……」 「なあ、忘れてる気がするってこのことか」 「う、む。どうだろうか。分からぬ」 元々ほんの違和感にも値しないほどの小さな感覚である。今の危機的状況で頭の中がリセットされ、会話が終わる頃には引っ掛かりは無くなっていた。 ブランクは少し首を傾げたが、深く考えても仕方がないと諦め、食器の準備に取り掛かった。
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