蜻蛉返り

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「はあ……結局私は何をしに来たのだ」 龍希とブランクが和気藹々と夕飯を食べている頃、そのマンションの屋上でグルガンは一人途方に暮れていた。 「報告は問題無いとして、あんな醜態を晒してしまうとは。……む」 しかし、その時何者かの気配を背後に感じた。それは明らかに人間のものではなく、グルガンは素早く戦闘体勢を取る。 「盗み聞きとは趣味が悪いな。姿を現せ」 「失礼。そんなつもりは無かったもですが、些か間が悪かったようで……」 その背後にいた何者かは、意外にも素直に透明化の魔法を解いて言われた通り姿を現した。 「こうして一対一でお話しするのは久しぶりですね。レーガンさん」 「!」 グルガンのことを本名で呼べる者は限られている。ブランクにすら、本名で呼ぶのは控えて欲しいと釘を刺していた。上でもなく、下でもなく、親しいと認めた対等な者にのみそう呼ぶことを許している。
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