蜻蛉返り

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「そう意固地にならないで下さいよ。今でもマキナ家への恩や忠義は忘れていませんし、言うなれば龍王様もマキナ家です」 「その言い方は気に食わないが……そうだな。私も大人気なかった。それで、通達と言うのは何だ」 「かなり重要な連絡です」 アルフは懐から小さな書類を一枚取り出した。 「書面で記されていますが、例によって勿体ぶった書き方をしてあるので簡単に口頭で説明します。まず初めに、ルゴールド・グランエルが脱走しました」 「!」 公務と割り切っているのか、とんでもない情報をアルフは平然と言ってのける。対するグルガンは目を見開いて驚いたが、それは単純に脱走が技能的に可能であったことに驚いているのではない。 「そんなことをしたところで、到底生きる居場所などないことは分かりきっている筈だ。ましてや奴のようなプライドを重んじる貴族が、そんな見苦しい真似をするとは考えにくいが……」
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