新たな日常

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… …… ……… 「…………」 深夜、マンションの八階では虫の音すら届かない。カーテンを閉め電気を消せば、そこにあるのは完全な闇と静寂。耳を澄ましてやっとベッドの上から荒い二人分の呼吸が聞こえる。 「今日は、ずっと上の空だったな」 窓から流れる風がカーテンを揺らす度に月の光が差し込んでは消えた。息を切らせて上下するブランクの肩や胸がそれに照らされて浮かび上がり、そしてまた闇に沈む。 「ああ、悪いなブランク」 「途中でもバレットの話を思い出していたのか?」 「それだけじゃない。きっかけは今日だけど、思い出したのはこれまでも通して全部さ」 「ふふ……」 龍希が人差し指で青と白の境目を優しくなぞると、下に組み敷かれたブランクはくすぐったさで艶めかしく身体をくねらせた。
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