新たな日常

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「龍希、またテニス部に戻ってくれないか」 「…………」 初冬に起きたあの戦いから半年の時間が過ぎ、新しい学年に進んだ龍希は三度目になる誘いを複雑な気持ちで断った。 「なあ、俺達はまだ高校二年だ。今から練習すればまだ間に合うって!」 「悪いな」 龍化の影響で飛躍的に上昇した身体能力に関しては、制御して一般人のレベルを再現することはできる。事実、必死の訓練で先週の体力測定では去年と殆ど変わらない記録を出す絶妙な力加減を人知れず披露した。 しかし、龍希は部活どころか人との関わること自体を極力断っている。 (まだ『新しい人』の名前と顔、覚えきれてないしな) 誰も気が付かない、余りにも深い戦いの爪痕。その全てを背負って生きる龍希には、平和な日常が放つ歪んだ光が不気味で仕方がないのだ。
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