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「まあいいや。取り敢えず食事にしよう。ふふっ」
龍希は弁当箱を取り出すなり、事情を知らない者が見たら気分を悪くしそうな薄ら笑いを浮かべた。
「お前いい加減にそれ止めろよ!」
「だってさあ……」
龍希にとって、それは仕方のないことである。溢れる幸せに笑みが抑えられないのだ。
「はいはい。16で愛妻弁当が食えるなんて幸せな奴だよ全く」
「だよな、そう思うよな?」
(やれやれ……)
青山の投げやりな賛辞を謙遜することもなく、龍希は色鮮やかな愛妻弁当と左手の薬指を交互に眺めた。周りのことも考慮してテーピングで隠してあるが、そこにあるのは他でもなく蒼の婚約指輪。
あの後に聞いた話によると、龍希が壊してしまった誓約の壁は元には戻らないらしいく、龍希とブランクは常に近距離で暮らす必要はなくなった。
つまりこうしてある程度の距離を置き、本物の夫婦と同じ生活をすることができるようになったのである。
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